東京高等裁判所 昭和31年(ネ)623号 判決
当裁判所は原審と同一の理由により控訴人の請求を理由なきものと認めるので、特に「本件令状の執行に当つて警察官の執つた態度、すなわち執行に当つた警察官の数、出入禁止区域の範囲及び禁止した時間などについては、当時における共産党関係者の一部に実力行使を以つて公権力の執行を妨害せんと企図した者の屡々あつた公知の事例にかんがみるときは、むしろこの場合やむをえない行動であつたと認める外なく、これを以つて刑事訴訟規則第九十三条または旧警察法第一条に違反する行為と断ずることはできない。また右令状執行の内容については、およそ搜査の段階においては被疑事実に関係ある資料とこれに関係なき資料とを截然と判別することは必ずしも容易でない場合が多いのみならず、被疑事実と比較的関係の薄いと思われる資料であつても、これに対する調査が搜査を受ける者にさしたる不利益を与えるものでないと認められる場合においては、その資料に対して調査をなすも、必ずしもこれを不法不当ということはできないものというべきところ、本件において警察官が控訴人主張の室内ビラ及び機械の構造配置を写眞に撮影し、また家屋の間取、坪数を調査録取し、或いは労働組合役員名簿の調査をなしたことは、本件被疑事実と深い関係はないと思われるけれども、全く無干係と判断することもできないのみならずかくの如き調査をなしたことによつて控訴人が格別の不利益を受けたとは考えられない、よつて右執行の内容もまた控訴人主張のような不法行為を構成するものではないといわざるをえない。」と附加訂正する外、原判決理由の記載をここに引用し、本件控訴はその理由がないのでこれを棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十五条を適用し、主文のとおり判決した。
(岡咲 龜山 脇屋)